新・永山あゆむの小さな工房　400字小説　最初の一手



――ずっと、暗い暗い深海にいた。　暗い海の空にある小さな光に向かって、両手を払って泳いでも、地上から落とされた障害物が次々と落とされ、幾度となく行く手を阻んでいた。　あこがれた場所へ飛び立つ、最初の一手。それがこんなにも、遠い遠い存在とは……本当に思いもしなかった。　何も知らずに飛び込み、現実を知った。　何度も何度も諦めた。　何度も何度も心が砕けた。　ずっとずっと、暗い海の底から見上げる日々だった。　だけど、その失敗が積み重なり、自分だけの光の軌道が輝きだした。　その道を踏み外さないように、このチャンスを逃さないように、丁寧に泳いでいく。　水平に泳ぐ魚たちではなく、自由に羽ばたく蝶たちのように、今、飛び出す。　――僕は今、夢限（ムゲン）の空へと羽ばたいた。
＜ライナーノーツ＞　夢ってカタチにするのが本当に大変ですよね。カタチにするまでの過程って、とてつもなく大きな曲線を描き、野をこえ山を越え、さらに嵐を駆け抜け……そして終着駅へ到達する――そんなイメージを私は持っています。私も書くことをひとつの武器として、夢の線路へと飛び出していますが、本当、何度くじけてしまったか……。　夢をカタチにする「最初の一手」を作りだすのは、本当に大変なことです。何度も何度もつまずき、何度も何度も作っていく。忍耐力が大事です。でも、その過程こそが自分が「好き」なことをしている証でもあり、トライ＆エラーを繰り返すことこそが、夢をカタチにする最善の方法なんだなと、いま強く思っています。まあ、繰り返すことの大切さは、本職の仕事でしっかりと学んでいますけどねw 　ともかく、若手声優団体・声珈琲（こえかふぇ）さんの朗読劇シナリオ制作をきっかけに、ライターとしても一歩踏み出すことができたかなと、嬉しく思っております。＜2016.10.17＞
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