新・永山あゆむの小さな工房　400字小説　タイムレス



――この時がずっと続いたら。　光の絨毯（じゅうたん）に乗って、宇宙を無限に駆け抜け、目の前にいるギャラリーを引き連れて、宇宙の果てまで向かうような、この感覚。　いや、オレも引っ張られいるんだと思う。カッコよくドラムを叩くオレの目の前にいる、いつもムカつくほど……いや、憧れているボーカルで部長の、先輩の背中に。　初めて会ったときは、女だから甘く見てて、道場破りのように乗っ取るつもりだった。だけど、見る人の背中に追い風を起こすような、感情豊かな声量に、圧倒された。　先輩が放つ風に乗ったらオレも……だから、彼女についていくことにした。　ずっとずっと、ドラムを叩いて張り合った。「オレの方がうまいッスよ！」って。　だけど、憧れた人との共鳴は、もう……。　ああ……宇宙のように、この時間が永遠に続いたらのにな。
＜ライナーノーツ＞長編小説『moonlight』に出てくるバンド――moment's（モーメンツ）のドラム担当の高校1年生、野上健斗（のがみけんと）の視点で描いたお話です。時間軸は主人公の麻倉音緒（あさくらねお）の視点で描いた前作、『タイムマシーン』と同じ時間軸です。moment'sとして最後のライブである文化祭のなかで、どんな想いでドラムを叩いているのか、そんなところを彼なりの言葉で描いています。とてもナルシストで、先輩でもあるネオには『ナル男（なるお）』とあだ名をつけられただけあって、ナルシストっぽい言い回しになっているなあ(笑)。特に『カッコよく』って言っているところが(笑)。個人的に気に入っております。タイムレス＝永遠の＝ずっとこのバンドで続けられたらと想うmoment'sに対する愛着も、憧れへと変わった先輩に対する尊敬の念からなのかもしれませんね。音緒とのなれ初めについてはシナリオでしっかり描く予定……なので、お楽しみに！＜2016.12.11＞
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