新・永山あゆむの小さな工房 タイトル

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400字小説 未完成な音色が響く空sideS
 



 僕は今、大好きだった彼女の背中を見つめている。彼女には僕のことが見えていない。5年前、空へ旅立ったから……。

 この公園の高台から見る景色と音色、そして彼女との会話は、黒ずんだ僕の心が一瞬だけ白に染まる場所だった。

 僕も、彼女と同じ学生生活を送っていた。

 心という名の核が違うだけで、多くの人間に傷つけられ、学校という牢獄からひたすら逃げ回り、耐えた。時には立ち止まり、彼女を守ったけど……返り討ちだった。

 心というのは残酷な装置だ。たった一つの行動で、僕と彼女を傷つける連鎖を生む。それに耐えられず、僕は空へ……。

 弱かったのは僕の方だ。だけど、耐えたのは僕のおかげだ、と何度も空へ語る彼女。そんな彼女を誇りに思う。

 だから僕は、この空から願い続ける。

 この幸せな未完成な音色が、彼女に永遠に優しく、響きますように、と。


   
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