こんな澄んだ空を見たのは久しぶりだ。
住んでいる団地の上にある道路から見た景色は、カラフルな光に包まれていた。オレの目が元に戻った証、なのかもしれない。
「ここにいたんだ、優太」
「ネッチー……音緒」
俺の左隣に静かに佇む、幼なじみの彼女。
「復帰戦、明日だね。見てるから」
「ああ」
そう。明日はオレにとっての復帰戦。中学時代、オレのせいで負けて、責められて、心が折れて、ソフトテニスが嫌いになった。
だけど、嫌いになれなかった。幼なじみには音楽で背中を押してくれて、新しい相方は、背中は俺が守ってやる、と勇気をくれた。ラケットから手を離したおかげで、大切なものが残っていることを知った。
そのために、オレは再びラケットを握る。
臆病な灰の世界から帰還したオレを待っていた人のために……。
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