新・永山あゆむの小さな工房 タイトル

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400字小説 優しさにあふれた場所へ
 



 炎が立ち上るなか、私は蹲(うずくま)っていた。

 近隣諸国の争いに巻き込まれた私の街は、国からの伝令も何もないまま、瞬く間に戦火となり、罪のない街の人を友人を、そして家族をも獄炎に呑みこんだ。

 唯一生き残ったのは、私だけ。

 家族に護られ、戦場となる前に必死に外へと出ていった結果がこれだった。

 余りにも無惨で空虚な夜空。悲愴感で涙が枯れた。同時に瞋恚(しんい)の炎が心に灯った。

 なぜ赦(ゆる)しあうことができないのか。なぜ心に壁を作るのか。なぜその壁を武力で射貫くのか。なぜ、罪のない人間までも「敵」と見なすのか。

 優しさはどこから生まれ、どこで消え去るのだろう。世界が陽だまりの色に染まったらあるいは……。

 私は炎の道をゆっくりと歩き出した。

 いつか、優しさにあふれた場所へとたどり着く、そんな日を目指して……。




   
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