新・永山あゆむの小さな工房 タイトル

永山あゆむの小説・シナリオ創作ホームページです。

400字小説 ゆらり-嘘つきな私へ-
 



 駅ビルの屋上から見える新幹線が、彼を遠くへ運んでいく。

 ――初めて会った印象は、最悪だった。

 ソフトテニスの朝練をしていたわたしを挑発し、格が違うんだと言わんばかりにテクニックを見せつける彼。今思えば、「つよがり」だったのかもしれない。

 そのおかげで、陰を潜めたわたしは、いつの間にかいなくなった。

 だけど、最後の最後でこの状況。

 ほんと最悪。引っ越す彼に最後の言葉が、なんで「またね」なのよ。最悪すぎ。

 わたしはまた、陰を潜めてしまった。

「わ―――――――――っ!!」

 駅ビルの屋上から、ぐちゃぐちゃにした紙のように、わたしは想いを声にした。

 さようなら、嘘つきな私。

 さようなら、私の想い出。

 ありがとう、私の好きな人。

 心が、ゆらり、ゆらり、と揺れている。

400novels count
Total count
     









ページトップへページトップへ ウェブノベル メインページへWeb Novelメインページへ
c 2015-2016 新・永山あゆむの小さな工房. All rights reserved.