――ねぇ、ここから聴いた音色はどんな音だった?
優しくて、大好きだった彼が、自ら神様の国へ旅立って五年。私はいつも仕事帰りに、彼と一緒に来ていた公園の高台から街を見渡している。
静かな海の音、家へ帰る車の音、学生たちの声……毎日違う音が、冬の夜空に響く。
学校で孤独な私をいつも優しく話しかけ、居場所を教えてくれた彼。傷つけられている私をいつも守ってくれた彼。なんで、黙って私の手を離したのだろう。ここにいないこと、手を強く握れなかったことが、いつも心に針が貫く。私が弱くなかったら……貴方のおかげでここにいるのに。
だから私は、私を生かした彼のために生きる。不安定だけど優しさに満ちたこの世界で。
彼のように、優しい人であるために。
――今日も未完成な音色が、空に響く。
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