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 ○周防大島 楓華の別荘:砂浜(夏(八月))
 
 
  砂浜と海を照りつける太陽。
 音緒「海だぁーっ! ひゃっほー!」
 
 ビーチボールを持ったまま、海に向かって砂浜を走る麻倉音緒(18)。舞永朱莉(17)に選んでもらったビキニを着ている。
 
 朱莉「そうちゃん、いっくよー!」
 
 蒼士「ちょっ、手、引っ張らないでー」
 
 仲須蒼士(18)、朱莉に引っ張られて海へ向かう。二人とも水着を着ている。
 砂浜の方から水着を着た小倉優太(18)が大きな声で、
 
 優太「はしゃぎすぎてケガすんなよー」
 
 楓華「小倉君」
 
 水着を着た七瀬楓華(17)が優太のところに。ビーチパラソルを持っている。
 
 優太「七瀬」
 
 楓華、申し訳なさそうに、
 
 楓華「ごめんね。強引に付き合わせて……」
 
 優太「別にいいよ。テニスも引退してちょうど暇だったし。パラソル立てようか?」
 
 楓華「え? うん、あ、ありがと」
 
 優太、ビーチパラソルを立てながら、
 
 優太「音緒が強引に決めたんだろ、今回のこと」
 
 楓華「うん。みんなと思い出を残したいって」
 
 優太「アイツらしいな。長里が来れないのは残念だけど」
 
 楓華「うん、東京に行ってるみたい」
 
 優太「そっか……よし、準備完了」
 
 パラソルが開く。
 楓華、パラソルの影の下に座る。
 優太、楓華の隣で寝そべり、
 
 優太「ふう、影に入るだけで、こんなに楽になるなんてな」
 
 楓華「それ、太陽の下で、真っ黒な顔でテニスしか考えてなかった人が言う?」
 
 優太「ほっとけ。テニスを引退してから、少しは色々なものが見えるようになってきたんだよ」
 
 楓華「成長したわね」
 
 優太「だろ?」
 
 楓華「別に褒めてないわよ」
 
 優太「なんだよ、それ。……テニス終わったらさ、テニス以外のことで、少しは遊んでいたけど、それ以外に何もないと思ったら、ちょっとつまらないなと思ってさ……」
 
 楓華「うん」
 
 優太「よくよく考えたら、おれ、アイツに甘えてばっかだったし……」
 
 海で朱莉と蒼士と遊んでいる音緒を見つめる優太。
 
 優太「アイツを振り回されるのも振り回すのも、幼なじみの特権だし……アイツと一緒なら、これから先もいい思い出がたくさんできる気がする」
 
 楓華「ふーん……」
 
 楓華、優太をまじまじと見つめる。
 優太、たじろいで、
 
 優太「な、なんだよ」
 
 楓華「別に。少しは距離が縮まったのかなって」
 
 優太、顔を赤らめて、
 
 優太「そ、そんなんじゃねーよ」
 
 音緒(声のみ)「おーい、楓ちゃん、優太ーっ!」
 
 優太と楓華、音緒がいる方へと見やる。
 
 音緒「ビーチバレーやろーよ!」
 
 優太「いいぜ、ネッチー」
 
 音緒、不満そうに、
 
 音緒「ネッチーじゃなーい!」
 
 優太、起き上がり、音緒たちのもとへと走っていく。
 楓華、嬉しそうに、
 
 楓華「ふふ」
 
 楓華、立ち上がり、音緒たちのもとへと向かう。
 
 
 
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