新・永山あゆむの小さな工房 タイトル

永山あゆむの小説・シナリオ創作ホームページです。

序章:希望となるために
第1話:動き出す心(1)
<登場人物>

エイジ・ハセガワ(18)(9)男性。主人公。
エミリー・ミチヅキ(18)女性。ヒロイン。エイジの幼なじみでアイドル歌手。通称エミー。
ブリーゼ・オイサキ(28)女性。国際特秘遂行警備組織“影星”所属の団員。

友達A
友達B
黒服の女A
黒服の女B




〇真っ黒な画面

 黒一色の画面に文字が浮き出る。

ナレーション(以下N)「断罪の一撃(メテオストライク)」


〇戦争

 赤い鎧を纏った兵士たちと青い鎧を纏った兵士たちが、武器を手にして戦場で火花を散 らしている。
 放たれた大砲で、地表が引き裂かれ、両軍の兵士たちが吹き飛ばされている。
 戦火で荒廃した土地から、どす黒い紫色の粒子――闇子(サタン)が地表から湧き上がる。

N「世界の光子(マナ)を蝕むとき、この地に災いの種が満ち」

 兵士たちが上空を見上げている。

N「冥の者より、裁きを受けるだろう」

 上空から扉が現れる。
 扉から赤く染まった目がでてくる。

N「それがこの異世界――ソルスワールに与えられた『呪い』である」


〇ミザール国・首都ヴァイトインゼル 街の中

N「異世界ソルスワール ミザール国。首都ヴァイトインゼル」
エイジ「ふあーあ」

 あくびしながら街を歩くエイジ・ハセガワ(18)。
 襟足の長い黒髪で、上はパーカー、下はサスペンダー付きのカーゴパンツを履いている。
 眠たそうな顔で、花に囲まれた華やかな街の中を歩いている。

エイジ「……ったく、あの依頼人、自分勝手すぎるだろ。これだから大人は」

 エイジ、溜息をついて、トボトボと歩く。

エイジ(ナレーション(以下N))「故郷を飛び出して一年。理想と現実は違うと、この街に来てつくづく思う」

 街の中にいる人々は、笑顔で溢れている。
 噴水の中心には人型の像が立っている。

エイジ(N)「平和な世の中で、なんで虚無感に苛まれないといけないのか、それは俺にもわからない。ただ一つ分かるのは、俺だけが『止まっている』ということ」

 エイジ、立ち止まり、見上げる。
 エイジの目線の先には花模様が描かれたドームがある。

エイジ(N)「俺は、この世で何ができるのだろうか」

 エイジがフラワードームに向かうその背に、サングラスにスーツを着た、赤い長髪の女性、
 ブリーゼ・オイサキ(28)がドームを見つめている。

ブリーゼ「……」

 左手に着けているグローブを見つめるブリーゼ。
 グローブの手の甲の部分にあるひし形の物体が、黒く光っている。


〇同国・同首都 フラワードーム 入口

 フラワードームの入口に警備員がおり、人々が長蛇の列を作っている。
 その中に並んでいるエイジ。

 入口には、『Emily :The Scarlet Roses of Passion Concert』と書かれた看板と、
 ブラウン色のミディアムボブの髪型で、バラのように紅いフリルドレスを着た、エイジの幼なじみ、
 エミリー・ミチヅキ(18)の等身大パネルが立てられている。


〇同国・同首都 フラワードーム 楽屋

 楽屋では、等身大パネルと同じ衣装を着たエミリーが椅子に座って、鏡を見つめている。
 女性のスタイリストが彼女の髪を整えている。

スタイリスト(女)「はいっ、できたよ」
エミリー「ありがとうございます」

 エミリー、立ち上がり、鏡に向かってポーズを決める。

エミリー「よし!」

 コンコン、と扉から音が聞こえる。

エミリー「あ、はい」

 ガチャ、と開ける音。

エミリー「エイジ!」

エイジ「よ、よお……」

 疲れた表情で楽屋に入ってくるエイジ。

エミリー「ど、どうしたの?」

エイジ「お前、人気ありすぎ」

エミリー「えっ?」

エイジ「開場すると同時に押されたり、中に入れば男どもがわんさかとむさくるしいし……ここに来んのだって、おまえにもらった特別許可証を警備員見せただけで、背後から鬼のような視線が……」

エミリー「(苦笑する表情で)なんか、ごめんね」

エイジ「いいさ。おまえが頑張っている証拠なんだし。それに、幼なじみがせっかくライブをするんだ。何が何でも見に行くさ」

エミリー「ありがとう、エイジ」

エイジ「(照れた顔で)お、おう」

 エイジ、微笑むエミリーにドキッとする。

エイジ「そ、それにしても、いいのか? 本番まで時間がいないのに」

エミリー「大丈夫だよ。リハはもう済ませているし、あとは全力を出すだけだから」

エイジ「そっか」

エミリー「うん。今日も一人でも多くの人が、わたしのライブで希望をもってくれたらいいな」

エイジ「希望を照らす光と在れ。おまえが思うアイドルとしての使命、だったか」

エミリー「そう。どんなに苦しくても、どんなにつらくても、必ず明るい方向に進んでる。だから、わたしもこの夢が叶った。水の底で溺れそうになっても、必ず見えるものがある。その経験を、伝えたい。それが、わたしがアイドルとして指し示す可能性――光なの。だからわたしは歌うの。そうすれば、お父さんとお母さんだって、きっと……」

 エミリー、胸のところで願う様に両手を握りしめる。
 エイジ、エミリーの頭をそっと撫でる。

エイジ「大丈夫さ。エミーの歌を聴きたい人がたくさんいるんだ。それは、たくさんの人にエミーの届いているってことだろ。だから、大丈夫さ」

エミリー「エイジ……うん、ありがとう。 わたし、頑張る!」

エイジ「その意気だ。あーあ、俺もエミーみたいになりたいなあ」

エミリー「何いってるの。エイジだって、わたしよりもきっと大きなことができるわよ」

エイジ「(自分のことが分かりきって、だめだと思っているように)いや、俺にはできねえよ……」

エミリー「(心配そうに)え……仕事、上手くいってないの? 確か、街の隅にある何でも屋で働いているんだよね? どんな依頼も対応するっていう」

エイジ「そう。まあ、やってると言えばやってるんだけど……ほんっと、大人の嫌な部分が目に見えるぜ」
エミリー「何かあったの?」

エイジ「依頼主たちがワガママでさ、掃除をやって、さらには買い物して、料理して、洗濯して……俺は家政婦じゃねぇっつーの。この前だって犬の世話で手を噛みつかれたし、子供のいたずらが原因で、なぜか俺が代わりに謝りに行く始末だし」

 エイジ、ため息をついて

エイジ「ったく、エミーみたいに輝きたくて故郷を飛び出して首都に来たっていうのに……ほんっと、大人って傲慢だぜ。そういうやつらを黙らせたいのに……何も変わりゃあしねぇ。(寂しそうに)結局俺は、そこまでの人間なんだな」

エミリー「(エイジを心配するように)エイジ……」

 エミリー、心配そうな顔でエイジを見つめる。

エイジ「あ、ご、ごめんな。これからライブだってのに。(エミリーの心配そうな顔を見て)そんな顔すんなよ、大丈夫さ。これからだよ、これから! ストレスがたまってナイーブになってるだけだから」

エミリー「(心配そうに)ほんとに?」

エイジ「本当。だから気にすんな。……それじゃあライブ、期待してっから。また後でな」

 エイジ、扉の方へと向かう。

エミリー「エイジ!」

エイジ「ん?」

 エミリーの声に、立ち止まり、振り向くエイジ。
 エミリー、両手をぎゅっと握り、

エミリー「(気持ちが届くように)わたしの歌で、少しでもいいから、希望を持ってね」

 エイジ、その場で少し黙って、再び扉の方へと歩きながら、

エイジ「ああ、いっぱいもらうわ」


〇同国・同首都 フラワードーム ホール

 一万人ほどの観客を呼べる大きなホール。
 たくさんの人が集まっており、ライブを今か今かと待っている。

男A「エミーちゃーん!」

男B「愛しのエミーっ!」

 観客が彼女の名前を呼ぶ一方、エイジは小声で、

エイジ「エミー、エミー、うるせえっての。最初にあいつをエミーと呼んだのは、俺だっていうのに……」

 観客のエミーコールに不機嫌になるエイジ。


〇同国・同首都 フラワードーム ホール 屋根裏

 ホールの天井の屋根裏で、黒服を着た謎の女二人が隙間から様子を伺っている。

黒服の女A「あららー、ずいぶん人が多いねー」

黒服の女B「フフ、良い実験になりそうだな」

 黒服の女B、赤紫色が渦を巻いている不気味な玉を取り出す。

黒服の女B「しかし、これだけの人数を犠牲にするのは、いささか忍びないな」

黒服の女A「何いってんのよー、これも世界(せいぎ)のためだよー」

黒服の女B「そうだな」


〇同国・同首都 フラワードーム ホール 出入り口

 人がホールの出入り口を行きかう中、その付近で、サングラスをかけたスーツの女性――
 ブリーゼが、ステージをじっと見つめている。


〇同国・同首都 フラワードーム ホール

 ホール内の照明が消える。

エイジ「おっ……」

 座席に座っている観客たちが立ち上がる。
 ステージに張っている幕に、証明が灯る。

エミリー(声のみ)「こんにちはーっ! みんな、元気――っ?」

 盛り上がる観客たちの声。

エミリー(声のみ)「今日はみんなの未来に光を灯すために歌うから、ついてきてね――――っ!」

 観客たちの声が増していく。その中で、黙ってステージを見つめるエイジ。

エミリー「それじゃあ、行くよーっ! ワン、ツー、スリーっ!」

 ステージの幕が落下し、エミリーが現れる。
 観客に向かって、ドレスの裾をつまみ、おしとやかに挨拶をする。
 そして華麗なステップでステージを舞う。パフォーマンスに観客たちが興奮する。

 エミリーのパフォーマンスに、目が離せないエイジ。

エイジ「希望、それがアイドルの姿と言ってたけど……体現しているじゃねーか。差がデカすぎるぜ……くそっ」

 観客に聞こえない声音で呟くエイジ。

エミリー「それじゃあみんな、準備はいいわね? 最初にジャンプよ!」

 エミリーの指示に、声を上げる観客たちの声。

エミリー「いくわよー! スリー、ツー……」


〇同国・同首都 フラワードーム ホール 屋根裏

黒服の女B「時は満ちた。希望は、絶望で満たされるのだ!」

 黒服の女B、屋根裏の隙間から、赤紫色の波が渦を巻いている不気味な玉を投げる。


〇同国・同首都 フラワードーム ホール ステージ

エミリー「ワン!」

 エミリー、人差し指を出す。その瞬間、

エイジ・エミリー・ブリーゼ・観客「!」

 会場内で爆発音が響き、ホールが赤紫の煙で充満する。



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Meteor strike count
Total count







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