新・永山あゆむの小さな工房 タイトル

永山あゆむの小説・シナリオ創作ホームページです。

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Scene3
<登場人物>


・阿澄 杏子(20)あすみ きょうこ。主人公。女性。大学二年生。

・今野 明寿香(18)こんの あすか。女性。故人。高校三年生の時に自殺。

・泉の女神 いずみのめがみ。女性。大学の裏山の麓にある、泉の主。




・代価の世界 神殿 最深部

  暗い神殿の内部を歩く杏子。
  奥へ奥へと進むと、

杏子「まぶっ! ここは……」

  杏子、光に照らされたフロアをキョロキョロ見ながら奥へと歩いていく。

杏子「これって」

  杏子、立ち止まり、目の前に飾られている巨大な壁画を見つめる。

杏子「これは、女神さまの絵……?」

泉の女神(声のみ)「よく来ましたね」

  壁画が光り出す。

杏子「うわぁ!」

  杏子、思わず目を閉じる。

  光りが消え、恐る恐る目を開ける。
  杏子の前に、泉の女神(いずみのめがみ)が降臨している。

杏子「あ、貴方が、泉の女神、さま?」

  泉の女神、優しいまなざしで、

泉の女神「はい。ようこそ、代価(だいか)の世界へ」

杏子「だ、だいかの、世界?」

  泉の女神、うなずき、

泉の女神「ここは願いを叶えたい強い想いによって開かれる、試練の世界。貴方の強い意志と願いが、この世界の扉を開きました。わたくしは、貴方の願いが叶えるに値するか、それを見届ける選定者」

杏子「せ、選定者……」

  杏子、黙って泉の女神を見つめる。

泉の女神「願いを叶えるには、それに対する代価が必要となります」

杏子「代価……?」

泉の女神「ええ。願いとは必ず世界を揺るがす何かが起こる人の業の塊。その業に燃やされることなく、苦しくても、辛くても、ただ前だけを見る力――それが代価です。貴方には、その覚悟がありますか?」

杏子「……」

  杏子、顔を下に向け、胸に手を当て、しばらく黙る。

  杏子、泉の女神をまっすぐに見つめて、

杏子「はい」

  杏子、勇気を振り絞るように、

杏子「どんなことがあっても、あの子と一緒なら、逃げません。あの子には、あたしが生きている世界で、幸せになってほしいから。生きていてほしかったから。そのためには、どんなことも厭わない。覚悟は、できています」

  泉の女神、杏子を黙って見つめる。
  泉の女神、小さな声で、

泉の女神「あの子も願っていたものね」

杏子「……え?」

泉の女神「わかりました。では、貴方が想うその願い、試させていただきます。後ろを向いてください」

杏子「は、はい……」

  後ろを向く杏子。
  泉の女神、杖を振りかざし、

泉の女神「魂よ、今ここに具現せよ……!」

  女子高生の姿をした、今野明寿香が目を閉じた状態で、空中に浮かんでいる。
  明寿香、ゆっくりと降下する。地面に足をつくと、目をゆっくりと開ける。

明寿香「ここは……? そこにいるのは、キョウちゃん……?」

  杏子、明寿香の声に感動し、瞳に涙をにじませ、声を震わせながら、

杏子「アス……!」

  泉の女神、注意するように、

泉の女神「振り返ってはなりません!」

杏子「え!?」

泉の女神「それが貴方への試練です。後ろにいる友を信じ、決して振り返らずに、前に、前に、進んでください。無事にここから抜け出せたら、貴方の願いは叶います。わたくしに、諦めずに、未来を向かって歩くことを示してください」

杏子「……わかりました」

泉の女神「貴方も決して、この方の顔を見てはなりません。よろしいですね」

  明寿香、不安そうに、

明寿香「あ、はい……」

泉の女神「では、お行きなさい」

  杏子、勇気を振り絞るように、

杏子「行こう、明寿香……!」

明寿香「う、うん」

  神殿の出口へと進む杏子と明寿香。
  泉の女神、出口へ向かう二人を見ながら、祈るように、

泉の女神「二人の未来に、良き導きがあらんことを……」



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