永山あゆむの小説・シナリオ創作ホームページです。
Scene3 | ||
<登場人物> | ||
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・代価の世界 神殿 最深部 暗い神殿の内部を歩く杏子。 奥へ奥へと進むと、 杏子「まぶっ! ここは……」 杏子、光に照らされたフロアをキョロキョロ見ながら奥へと歩いていく。 杏子「これって」 杏子、立ち止まり、目の前に飾られている巨大な壁画を見つめる。 杏子「これは、女神さまの絵……?」 泉の女神(声のみ)「よく来ましたね」 壁画が光り出す。 杏子「うわぁ!」 杏子、思わず目を閉じる。 光りが消え、恐る恐る目を開ける。 杏子の前に、泉の女神(いずみのめがみ)が降臨している。 杏子「あ、貴方が、泉の女神、さま?」 泉の女神、優しいまなざしで、 泉の女神「はい。ようこそ、代価(だいか)の世界へ」 杏子「だ、だいかの、世界?」 泉の女神、うなずき、 泉の女神「ここは願いを叶えたい強い想いによって開かれる、試練の世界。貴方の強い意志と願いが、この世界の扉を開きました。わたくしは、貴方の願いが叶えるに値するか、それを見届ける選定者」 杏子「せ、選定者……」 杏子、黙って泉の女神を見つめる。 泉の女神「願いを叶えるには、それに対する代価が必要となります」 杏子「代価……?」 泉の女神「ええ。願いとは必ず世界を揺るがす何かが起こる人の業の塊。その業に燃やされることなく、苦しくても、辛くても、ただ前だけを見る力――それが代価です。貴方には、その覚悟がありますか?」 杏子「……」 杏子、顔を下に向け、胸に手を当て、しばらく黙る。 杏子、泉の女神をまっすぐに見つめて、 杏子「はい」 杏子、勇気を振り絞るように、 杏子「どんなことがあっても、あの子と一緒なら、逃げません。あの子には、あたしが生きている世界で、幸せになってほしいから。生きていてほしかったから。そのためには、どんなことも厭わない。覚悟は、できています」 泉の女神、杏子を黙って見つめる。 泉の女神、小さな声で、 泉の女神「あの子も願っていたものね」 杏子「……え?」 泉の女神「わかりました。では、貴方が想うその願い、試させていただきます。後ろを向いてください」 杏子「は、はい……」 後ろを向く杏子。 泉の女神、杖を振りかざし、 泉の女神「魂よ、今ここに具現せよ……!」 女子高生の姿をした、今野明寿香が目を閉じた状態で、空中に浮かんでいる。 明寿香、ゆっくりと降下する。地面に足をつくと、目をゆっくりと開ける。 明寿香「ここは……? そこにいるのは、キョウちゃん……?」 杏子、明寿香の声に感動し、瞳に涙をにじませ、声を震わせながら、 杏子「アス……!」 泉の女神、注意するように、 泉の女神「振り返ってはなりません!」 杏子「え!?」 泉の女神「それが貴方への試練です。後ろにいる友を信じ、決して振り返らずに、前に、前に、進んでください。無事にここから抜け出せたら、貴方の願いは叶います。わたくしに、諦めずに、未来を向かって歩くことを示してください」 杏子「……わかりました」 泉の女神「貴方も決して、この方の顔を見てはなりません。よろしいですね」 明寿香、不安そうに、 明寿香「あ、はい……」 泉の女神「では、お行きなさい」 杏子、勇気を振り絞るように、 杏子「行こう、明寿香……!」 明寿香「う、うん」 神殿の出口へと進む杏子と明寿香。 泉の女神、出口へ向かう二人を見ながら、祈るように、 泉の女神「二人の未来に、良き導きがあらんことを……」 |
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