新・永山あゆむの小さな工房 タイトル

永山あゆむの小説・シナリオ創作ホームページです。

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Scene5
<登場人物>


・阿澄 杏子(20)あすみ きょうこ。主人公。女性。大学二年生。

・今野 明寿香(18)こんの あすか。女性。故人。高校三年生の時に自殺。




・代価の世界 荒地の道(暗い)洞窟前

明寿香「ここから入ってきたの?」

杏子「うん。あと少しで願いが……!」

  嬉しそうな表情で走り出す杏子。
  突然、熱のこもった風が吹き荒れる。

杏子「きゃあ! な、なに?」

明寿香「風が……」

  熱のこもった強風がさらに強くなる。

杏子「うわあっ!」

  杏子、すさまじい熱のこもった暴風の影響で、地面に膝をつく。

明寿香「キョウちゃん!」

杏子「だ、大丈夫」

  すさまじい強風の中、苦しそうに黙ったまま、洞窟を見つめる杏子。顔が砂まみれになる。
  明寿香、呆然としたような、小さい声で、

明寿香「これじゃあ、先には……」

杏子「……いいじゃない……」

  杏子、ゆっくりと立ち上がる。
  両手を強く握りしめ、

杏子「これが、あたしへの最後の試練ってことね。いいわよ、やってやろうじゃない!」

明寿香「キョウちゃん!?」

杏子「アスはここで待ってて」

  杏子、暴風の中、洞窟に向かってゆっくりと歩き出す。

杏子「こんな暴風、すぐに乗り越えて……きゃあ!」

  杏子、暴風にあおられ、転倒する。
  明寿香、悲鳴をあげるような声音で、

明寿香「キョウちゃん!」

  明寿香、杏子の下へ行こうとする、

杏子「だめ!」

  杏子の声に、明寿香、立ち止まる。

杏子「あたしは大丈夫。絶対に、乗り越えて、見せるから……っ!」

  暴風の中、杏子は立ち上がり、

杏子「絶対、絶対に、叶えてやるんだから!」

  ゆっくり、一歩ずつ足を前に踏み出していく。

杏子「よし。こ、この調子で行けば……」

  暴風がさらに強くなる。

杏子「きゃあああっ!」

  バランスを崩し、暴風に押し出されるように吹き飛ばされる杏子。地面に背中を打つ。

杏子「う、うう……」

明寿香「キョウちゃん!」

  心配で杏子に近づこうとする明寿香。

杏子「来ちゃだめ!」

  明寿香、立ち止まる。
  杏子、よろめきながらもゆっくりと起き上がる。

杏子「だいじょうぶ……だから、あたしの顔を見ちゃダメ。なんとしても、あの日々を、二人で遊んでいたあの日々を、取り戻すんだから」

明寿香「キョウちゃん……」

  杏子、竜巻を見つめ、

杏子「もう一度……ああああっ!!」

  走り出す杏子。
 
  杏子のモノローグ(以下M)が入る。

杏子(M)「だけど、結果は同じで、あたしは、何度も何度も、分厚い壁にはね返された」

  すさまじい暴風に吹き飛ばされる杏子。
  地面にあお向けに倒れる。
  全身傷だらけになっている。

杏子「ううっ……!」

  明寿香、杏子の後ろで、泣きそうな声で、

明寿香「キョウちゃん、もう、これ以上は……」

  杏子、立ち上がり、よろめきながら、

杏子「だ、だめよ。ここで、諦めたら……ううっ」

  バランスを崩し、あお向けに倒れる杏子。
  明寿香、悲鳴をあげるように、

明寿香「キョウちゃん!」

  杏子、うつろな表情で、

杏子(M)「うう……こんなところで……倒れたら、いけないのに……アス……」
明寿香「キョウちゃん」

  明寿香、あお向けに倒れている杏子の顔を見つめる。

杏子「あす、か……」

  目を見開く杏子。
  明寿香、嬉しそうに、

明寿香「やっと、顔が見れた」
  
  杏子と明寿香、真っ白い空間へ。



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