永山あゆむの小説・シナリオ創作ホームページです。
Scene3 |
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<登場人物> | ||
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○高校 駐輪場(朝) 【SE】自転車の音。 【SE】自転車を止める音。 【SE】自転車のサイドスタンドを下げる音。 たくさんの自転車が並んでいる。 駐輪場にいる学生たちが友人たちと話しながら校舎に向かっている。 音緒「ふう、何とか間に合いそうね。さてと」 【SE】鞄のファスナーを開ける音。 自転車のかごに入っている鞄を開ける音緒。 チョコレートがあることを確認して、 音緒「よし」 健斗「せーんぱい!」 音緒「うおあっ!?」 後ろを振り返る音緒。野上健斗(16)がいる。 音緒「な、なんだー、ナル男(お)かぁー。脅かさないでよー」 健斗「だからナル男じゃねえっス! 野上健斗という偉大な名前があるんスよ!」 音緒「わかってるわよ、おはよ。健斗、さっそくだけどさ、何もみてないよね」 健斗「え? なんスか?」 音緒、慌てて、 音緒「いいのいいの! こっちの、こっちの話だから」 健斗、怪訝そうな顔で、 健斗「先輩、なんか変っスね」 音緒「べ、別にヘンじゃないわよ。で、なんか用なの?」 健斗、得意げに、 健斗「へヘン、今日は何の日か分かってるっスよね?」 音緒「今日?」 健斗「とぼないでくださいっスよ! あの甘くてとろけーる、食べるだけで体力全快になれる、男たちもといオレが待ち望んでるあれっスよ!」 音緒「だから何よ?」 健斗「だーかーら、はいっ!」 音緒に向かって両手を差し出す健斗。 二人の間に数秒間の沈黙。 音緒、冷たい口調で、 音緒「ない」 健斗、心底信じられない口調で、 健斗「な、ななな、なんででっスか! 先輩について行ってる後輩に、いたわりの気持ちの一つもないんスか!?」 音緒「タッくんにはあるけど、アンタにはないわね」 健斗「なんで巧だけなんスか!? お、オレにだって!」 音緒「そんな恩着せがましく催促されたら、渡す方も気が失せるわよ。でも、安心して、タッくんにもないから」 健斗、残念そうに、 健斗「ちぇー。もらえると思ったのに。あーあー、チョコもらえねーかなー」 音緒、呆れたように、 音緒「健斗、アンタまさか、もらえると思ってんの?」 健斗、自信満々に、 健斗「あったりまえっスよ! 毎週やってる昼の放送での演奏、放課後に毎月やっているコンサート、そして今年は文化祭に地元のライブフェスへの参加! moments(モーメンツ)でこれだけ活躍したんですよ。俺のドラムさばきとほとばしるアニソンへの熱き魂に、女子たちは心の音色を奏でたに違いないっス!」 どや顔の健斗。 音緒、呆れ果ててため息をつき、 音緒「アンタって、つくづくおめでたい頭の持ち主よね……」 健斗「そりゃどーもっス!」 音緒「いや、褒めてないから。これだからナル男は……」 健斗「だーかーら、ナル男じゃねぇーっス! その名前で呼ぶのやめてくださいよ。クラスの女子たちにも定着してんスから」 音緒「あら、いーじゃん」 健斗「よくないっスよ! おかげで女子たちに勘違いされて、距離置かれてんスよ!」 音緒「はいはい、文句はあとで聞くから。それよりも、わたし、今忙しいから先に……」 音緒、自転車を蹴ってしまい、自分の自転車も含めて、ドミノ倒ししてしまう。 鞄も開けっ放しにしてたことで入れていたものが外にでてしまう。 音緒、ショックを受けるように、 音緒「ああ――――っ!!」 思わず膝をついてしまう音緒。 健斗「あちゃー、ドンマイっス、先輩。じゃ、オレはこれで」 音緒「あ、待ちなさい、健斗!」 健斗、立ち去る。 【SE】走る音。 健斗「これから巧と会う約束があるので、事故処理お願いしまっス!」 音緒「こ―――――ら――――っ! ……まったく、イイ性格してるんだから。でも、アレを見てないみたいだから、いっか」 音緒、ドミノ倒しで横転した自転車と散乱した教科書と自転車に挟まれているチョコレートが入っている箱を見て、 音緒「チョコ、大丈夫かなあ」
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