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 ○高校 学生棟2F 2年1組(朝)
 
 
  【SE】教室の扉を開ける音。
 音緒、元気なさそうに、
 
 音緒「おはよー」
 
 クラスメイト(女子)「おはよう」
 
 音緒、席につく。
 
 【SE】席につく音
 
 音緒、だらっとした態度で、
 
 音緒「つかれたー」
 
 【SE】歩く音。
 
 実緒「音緒ちゃん」
 
 音緒「おはよー実緒」
 
 実緒、疲れている声音の音緒に疑問を抱いているように、
 
 実緒「どうしたの?」
 
 音緒「どーしたもこーしたもないよ。ウチのうるさいナル男のおかげで、駐輪場の自転車をドミノ倒ししてしまったの。おまけに鞄を開けていたから、チョコも教科書もバラバラに落ちて……あー、しんど」
 
 机に突っ伏せてしまう音緒。
 実緒、心配そうに、
 
 実緒「だ、大丈夫?」
 
 音緒、実緒の方へと顔をあげて、
 
 音緒「うん。なんとかね。チョコもつぶされてなかったし、バレなかったからひと安心だけど、幸先悪いなー。いや、慣れない事をやると、こーいう運命に一直線なのかな、わたし……」
 
 実緒「だ、大丈夫だよ。悪い方向に考えない方がいいんじゃない?」
 
 音緒、自信なさげに、
 
 音緒「そーお?」
 
 実緒「そうだよ。音緒ちゃん、言ってたじゃない、『悪い方向ばかり考えると、本当によくないことが起こる』って」
 
 音緒「そうだけどさー、本当にそーなりそうでこわい。うう……」
 
 机に突っ伏す音緒。
 
 実緒「ね、音緒ちゃん……大丈夫だよ。みちるちゃんやバンドのメンバーに渡すのだと思うけど……手作りのものなんだから」
 
 音緒「実緒」
 
 実緒の方へと顔を向ける音緒。
 
 実緒「音緒ちゃんが感謝だとか、言葉では表せない気持ちを込めたものなんだから、嫌がるなんてことは絶対にないよ。もし、嫌がる人がいるなら、その人に向かって、パ、パンチするから!」
 
 音緒、涙目で実緒を見つめて、
 
 音緒「うう……みおおーっ」
 
 実緒を抱きしめる音緒。
 
 実緒「音緒ちゃん!?」
 
 音緒「やっぱりあんたはわたしの、永遠の心の友だよおーっ」
 
 実緒「お、大げさだよー」
 
 優太「朝からなにやってんだ?」
 
 優太の方へと顔を向ける音緒と実緒。
 
 実緒「小倉君、おはよう」
 
 優太「はよっす、竹下さん」
 
 優太、音緒を見て、
 
 優太「朝っぱらから竹下さんをいじめてんのか?」
 
 音緒「しないわよ! というかするもんか!折れかけてたわたしのハートを慰めてもらってたの。あーもう。実緒はほんと、天使、エンジェル、いや、女神さまだよー」
 
 実緒「ね、音緒ちゃん……」
 
 優太「おまえは舞永かよ」
 
 音緒「あかりんと一緒にしないでよ!」
 
 優太「とにかく、竹下さんに迷惑だぞ」
 
 音緒「わかってますよーだ」
 
 優太「へいへい」
 
 音緒、実緒から離れる。
 音緒の隣の席に座る優太。
 
 【SE】席に着く音。
 
 優太「ふわーあ」
 
 音緒、あくびをする優太を見て、不機嫌そうに、
 
 音緒「相変わらず大きなあくびをするわね」
 
 優太「しょーがないだろ。大会も近いんだし」
 
 音緒「今回も大丈夫そうなの」
 
 優太「ああ、コンディションは上々。県大会、優勝を狙えるかもな」
 
 実緒「すごい」
 
 音緒「ふーん。そりゃいいことですわね」
 
 優太「ああ、そういえばさ、おまえ、俺に何か用があんのか?」
 
 音緒「は? 何が?」
 
 優太「七瀬が言ってたんだよ。おまえから何かあったかって」
 
 音緒「ふ、楓ちゃんが? い、いや、別になんにもないけど」
 
 優太「そっか。ならいんだけど。ふあーあ、ああ、ねみいー。ちょっと寝とくわ」
 
 音緒「ね、寝とくって」
 
 優太「おやすみー」
 
 机に突っ伏して、すぐに寝る優太。
 
 実緒「寝ちゃった」
 
 音緒「相変わらず寝つきはいいんだから。ソフトテニスができて幸せー、みたいな顔しちゃって」
 
 実緒「そうだね」
 
 音緒、小声で、
 
 音緒「だから心配にもなるのよ。こっちのことも少しは気にかけろっての、バカ」
 
 実緒、微笑ましそうに、
 
 実緒「ふふ」
 
 音緒「な、なに、実緒」
 
 実緒「小倉君がうらやましいなーって」
 
 音緒「ち、ちがうわよ! こいつが幼なじみだからほっとけないだけなんだから!」
 
 実緒「伝わるといいね」
 
 音緒「ち・が・うっ! 今日はバンドメンバーに渡すだけ、渡すだけなんだからね!」
 
 実緒「うん、わかってる」
 
 音緒「だからちがうってば!」
 
 優太「……ぐー……」
 
 
 
 
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