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 ○高校 学生棟2F 二年一組(放課後)
 
 
  【SE】チャイムの音。
 男子学生「気をつけ、礼」
 
 学生たち「さようなら」
 
 学生たちの喧騒の中、音緒、席に座っている。
 音緒、ひと息つき、
 
 音緒「いよいよかー」
 
 優太「いよいよってなにがだよ」
 
 音緒「っ!」
 
 音緒、突然話しかけてくる優太に驚きながら、
 
 音緒「べっ、別に、何もないわよ」
 
 優太「ふーん……」
 
 優太、鞄に教科書を入れながら、
 、
 優太「おまえさ、もしかしてだけど、チョコ持ってきているのか?」
 
 音緒「なによ急に。なんでそうなるわけ?」
 
 優太「今日、バレンタインだろ」
 
 音緒「……へぇー」
 
 驚いて、目を見張る音緒。
 
 優太「な、なんだよ、その態度」
 
 音緒「いや、イベントに興味のないアンタが覚えているなんて珍しいなーって」
 
 優太「七瀬から教えてもらったんだよ。それに、昼休みに友達がチョコもらってたしな」
 
 音緒「あ、そういうこと」
 
 優太「でもまっ、おまえはチョコ持ってくガラじゃないだろ。料理苦手だし」
 
 音緒、不満そうに、
 
 音緒「悪かったわね。そうよ。アンタにあげるチョコなんてこれっぽっちもありませんよーだ」
 
 優太「へいへい。そんじゃ、部活でもいきますかねっと」
 
 【SE】席から立ち上がる音。
 
 優太「じゃあなー」
 
 音緒「優勝目指してせいぜい頑張りなさいよー」
 
 優太「あー!」
 
 鞄を持って教室から出ていく優太。
 
 【SE】教室の扉を開ける音。
 
 音緒、小声でふてくされたように、
 
 音緒「ばか……」
 
 実緒「音緒ちゃん」
 
 実緒が音緒の席の前に。
 
 音緒「ああ、実緒、お疲れー」
 
 実緒「ふふ、仲いいね」
 
 音緒「別にそんなんじゃないわよ。くされ縁だからよ」
 
 実緒「でも、なんで嘘ついたの?」
 
 音緒「嘘なんてついてないわよ。本当のことなんだから。実緒はこれから渡すの?」
 
 実緒「うん。たくさんあるから鞄がパンパンだよ」
 
 音緒「そっか。喜んでくれるといいね」
 
 実緒「うん、音緒ちゃんも」
 
 音緒「わたしはガラにもないことやってるからなー」
 
 実緒「大丈夫だよ。気持ちがこもっているんだから。自信もって」
 
 音緒「うん。そうね。そうしないと、何も始まらないよね。よし」
 
 【SE】席から立ち上がる音。
 
 音緒「わたし行ってくる」
 
 実緒「うん、行ってらっしゃい」
 
 【SE】歩く音。
 
 【SE】教室の扉を開ける音。
 
 
 
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