新・永山あゆむの小さな工房 タイトル

永山あゆむの小説・シナリオ創作ホームページです。

Scene7-2
<登場人物>


・麻倉音緒(17)あさくらねお。主人公。同好会バンド『moment's』のリーダー。女性。高校二年生。

・長里みちる(16)ながさとみちる。音緒の友人。同好会バンド『moment's』ギター担当。女性。高校二年生。
・野上健斗(16)のがみけんと。音緒とみちるの部活の後輩。同好会バンド『moment's』ドラム担当。男性。高校一年生。
・伊藤巧(16)いとうたくみ。音緒とみちるの部活の後輩。同好会バンド『moment's』ベース担当。男性。高校一年生。





○高校 管理棟3F 図書室前(放課後)

(※Scene7-1からの続き)

音緒、チョコが入っている、包装された箱を取り出す。それを突っ伏して泣きべそをかいている健斗の前に置く。

【SE】机の上に箱を置く音。

みちる、チョコが入っている箱を見て、

みちる「健斗」

 健斗、顔を上げ、みちるの方へと顔を向いて、

健斗「なんスか」

みちる「前」

健斗「え?」

 健斗、目の前にある包装された箱を見つめる。

健斗「こ、この四角いのは?」

 音緒、照れながら、

音緒「……ふん」

 健斗、涙で潤んだ瞳で音緒を見ながら、

健斗「せ、せんぱひぃっ……」

 音緒、照れながら、

音緒「別に、アンタのことをどうと思ってないんだからね」

 健斗、涙ぐんだ声音で、

健斗「ありがどうございばす。うわ――――ん!」

音緒「チョコ一つで大げさすぎよ」

 音緒、鞄からチョコが入っている包装された箱を取り出す。

音緒「はい、タッくんにも」

 巧にチョコを差し出す音緒。
 巧、照れながら、

巧「……あ……あ、ありがとうございます……」

 巧、チョコを受け取る。

音緒「これからも頼むわよ」

巧「……は……はい……!」

みちる「へぇー」

音緒「な、なに?」

みちる「音緒がチョコを渡すなんて意外だなって思ってさ」

音緒「ま、まあ、たまには、ね。定期ライブも近づいているし、士気を上げるために少しは慣れないこともやらなきゃ思って、ね。はい、みっちぃにもチョコレート」

みちる「あ、あたしにも!?」

音緒「うん。こんなわたしと友達でいてくれるし、バンドでも支えてくれるから。これからもよろしくってことで」

 音緒、みちるにチョコの入った、包装された箱を渡す。

みちる「あ、ありが、とう……」

 みちる、照れくさい表情で、箱を受け取る。

音緒「言っとくけど、これ、わたしの手作りだからね」

健斗「え、マジっスか!?」

みちる「マジかよ」

 音緒、得意げに、

音緒「そうよ。わたしの愛がこもったものなんだから、ちゃんと食べてよね」

健斗「へ、へぇー……」

音緒「なによ、その声。まさか、やっぱりいらないとか言うんじゃあ」

健斗「ちがうっス。ただ、びっくりして」

音緒「なによ。わたしが作るのがおかしい?」

健斗「だって、みっちぃ先輩が作るのは分かるんですが、音緒先輩が作るのは……なんか、天地がひっくり返りそうで……」

 音緒、甲高い声で、

音緒「はあああっ!?」

 ネオ、思わず立ちがる。

 【SE】立ち上がる音。

音緒「わ、わたしのどこが天地をひっくり返すのよ!?」

健斗「だって、先輩がそんなことをするなんて、だれも思わないっスよ!」

音緒「思わない? 思いなさいよ!」

 健斗、立ち上がる。

 【SE】立ち上がる音。

健斗「できませんって! 一方的でガサツで、音楽以外のことなんてさらさら興味がないし! そーんな人が『こんなことをできるんです!』って想像すんのがおかしいっスよ!」

音緒「わたしだって女なんだから、するときはするわよ! ほんっと失礼にもほどがあるわよ、このナル男!」

健斗「先輩だって失礼じゃないっスか! オレはナル男じゃねぇっス!」

音緒「はあ? どう見てもナル男じゃない。いい加減、『オレはナルシストっス』って認めなさいよ!」

健斗「なんだと、この殺人ポニーテール!」

音緒「やんのか、このアンラッキーナルシ!」

音緒・健斗「うーーーーっ!!」

 ネオと健斗、睨み合う。

巧「……ひさしぶり、ですね……」

 みちる、ため息をついて、

みちる「最近なかったから仲良くなったと思ったんだけどねぇ……」

 みちる、手の間接を鳴らす。

 【SE】指の関節を鳴らす音。

 みちる、静かに立ち上がる。

 【SE】静かに立ち上がる音。

みちる「いい加減に、せんかぁっ!」

 みちる、ふたりの額をぶつける

 【SE】ぶつける音。

音緒「っっ! いったぁー……」

健斗「あ、頭が揺れるっス……」

みちる「ったく、仲良くせんか!」

音緒「すいません」

健斗「ごめんさない」

みちる「それじゃあ、とっととミーティングするよ」

 音緒、着席し、

音緒「はい……」

 健斗、着席し、

健斗「うっス……」

巧「ははは……」

 四人はミーティングを行い、今日の予定と今後のスケジュールを話し合う。



○高校 管理棟3F 図書室(放課後:夜6時)

 【SE】チャイムの音

音緒「もう6時? 早いなぁー」

巧「……外も真っ暗ですね」

みちる「そろそろ演劇部の活動も終わるな」

健斗「つづきはプレハブでやりますか?」

音緒「そうね。定期ライブに向けて詰めておきたいし」

巧「分かりました」

みちる「じゃあ、いったん解散して、30分からプレハブで活動再開ね」

健斗「了解っス!」

 4人はそれぞれの荷物の整理をする。

 【SE】荷物を整理する音。

 音緒、鞄の中にあるチョコが入っている包装されたを箱を見る。箱は少し汚れている。

音緒(心の声)「アイツもそろそろ終わっている頃よね……よし!」

みちる「音緒?」

音緒「ひゃっ!」

 後ろにいるみちるに顔を向ける音緒。

みちる「どした?」

音緒「い、いや、何でもない。何でもないから」

 慌てて鞄を閉める音緒。

 【SE】鞄を閉める音。

 みちる、怪訝そうに、

みちる「……今日の音緒、なんかおかしい。ほんとになんかあったの?」

音緒「べ、別に何もないよ。それよりも、わたしちょっと用事があるから、みんなは先にプレハブ小屋に行ってて!」

みちる「ちょ、ちょっと音緒!」

 【SE】鞄を持つ音。
 【SE】教室の扉を開ける音。
 【SE】廊下を走る音。

巧「……いっちゃいましたね」

健斗「先輩、何かあったんスか?」

みちる「あたしが聞きたいよ」



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