○高校 管理棟3F 図書室前(放課後)
(※Scene7-1からの続き)
音緒、チョコが入っている、包装された箱を取り出す。それを突っ伏して泣きべそをかいている健斗の前に置く。
【SE】机の上に箱を置く音。
みちる、チョコが入っている箱を見て、
みちる「健斗」
健斗、顔を上げ、みちるの方へと顔を向いて、
健斗「なんスか」
みちる「前」
健斗「え?」
健斗、目の前にある包装された箱を見つめる。
健斗「こ、この四角いのは?」
音緒、照れながら、
音緒「……ふん」
健斗、涙で潤んだ瞳で音緒を見ながら、
健斗「せ、せんぱひぃっ……」
音緒、照れながら、
音緒「別に、アンタのことをどうと思ってないんだからね」
健斗、涙ぐんだ声音で、
健斗「ありがどうございばす。うわ――――ん!」
音緒「チョコ一つで大げさすぎよ」
音緒、鞄からチョコが入っている包装された箱を取り出す。
音緒「はい、タッくんにも」
巧にチョコを差し出す音緒。
巧、照れながら、
巧「……あ……あ、ありがとうございます……」
巧、チョコを受け取る。
音緒「これからも頼むわよ」
巧「……は……はい……!」
みちる「へぇー」
音緒「な、なに?」
みちる「音緒がチョコを渡すなんて意外だなって思ってさ」
音緒「ま、まあ、たまには、ね。定期ライブも近づいているし、士気を上げるために少しは慣れないこともやらなきゃ思って、ね。はい、みっちぃにもチョコレート」
みちる「あ、あたしにも!?」
音緒「うん。こんなわたしと友達でいてくれるし、バンドでも支えてくれるから。これからもよろしくってことで」
音緒、みちるにチョコの入った、包装された箱を渡す。
みちる「あ、ありが、とう……」
みちる、照れくさい表情で、箱を受け取る。
音緒「言っとくけど、これ、わたしの手作りだからね」
健斗「え、マジっスか!?」
みちる「マジかよ」
音緒、得意げに、
音緒「そうよ。わたしの愛がこもったものなんだから、ちゃんと食べてよね」
健斗「へ、へぇー……」
音緒「なによ、その声。まさか、やっぱりいらないとか言うんじゃあ」
健斗「ちがうっス。ただ、びっくりして」
音緒「なによ。わたしが作るのがおかしい?」
健斗「だって、みっちぃ先輩が作るのは分かるんですが、音緒先輩が作るのは……なんか、天地がひっくり返りそうで……」
音緒、甲高い声で、
音緒「はあああっ!?」
ネオ、思わず立ちがる。
【SE】立ち上がる音。
音緒「わ、わたしのどこが天地をひっくり返すのよ!?」
健斗「だって、先輩がそんなことをするなんて、だれも思わないっスよ!」
音緒「思わない? 思いなさいよ!」
健斗、立ち上がる。
【SE】立ち上がる音。
健斗「できませんって! 一方的でガサツで、音楽以外のことなんてさらさら興味がないし! そーんな人が『こんなことをできるんです!』って想像すんのがおかしいっスよ!」
音緒「わたしだって女なんだから、するときはするわよ! ほんっと失礼にもほどがあるわよ、このナル男!」
健斗「先輩だって失礼じゃないっスか! オレはナル男じゃねぇっス!」
音緒「はあ? どう見てもナル男じゃない。いい加減、『オレはナルシストっス』って認めなさいよ!」
健斗「なんだと、この殺人ポニーテール!」
音緒「やんのか、このアンラッキーナルシ!」
音緒・健斗「うーーーーっ!!」
ネオと健斗、睨み合う。
巧「……ひさしぶり、ですね……」
みちる、ため息をついて、
みちる「最近なかったから仲良くなったと思ったんだけどねぇ……」
みちる、手の間接を鳴らす。
【SE】指の関節を鳴らす音。
みちる、静かに立ち上がる。
【SE】静かに立ち上がる音。
みちる「いい加減に、せんかぁっ!」
みちる、ふたりの額をぶつける
【SE】ぶつける音。
音緒「っっ! いったぁー……」
健斗「あ、頭が揺れるっス……」
みちる「ったく、仲良くせんか!」
音緒「すいません」
健斗「ごめんさない」
みちる「それじゃあ、とっととミーティングするよ」
音緒、着席し、
音緒「はい……」
健斗、着席し、
健斗「うっス……」
巧「ははは……」
四人はミーティングを行い、今日の予定と今後のスケジュールを話し合う。
○高校 管理棟3F 図書室(放課後:夜6時)
【SE】チャイムの音
音緒「もう6時? 早いなぁー」
巧「……外も真っ暗ですね」
みちる「そろそろ演劇部の活動も終わるな」
健斗「つづきはプレハブでやりますか?」
音緒「そうね。定期ライブに向けて詰めておきたいし」
巧「分かりました」
みちる「じゃあ、いったん解散して、30分からプレハブで活動再開ね」
健斗「了解っス!」
4人はそれぞれの荷物の整理をする。
【SE】荷物を整理する音。
音緒、鞄の中にあるチョコが入っている包装されたを箱を見る。箱は少し汚れている。
音緒(心の声)「アイツもそろそろ終わっている頃よね……よし!」
みちる「音緒?」
音緒「ひゃっ!」
後ろにいるみちるに顔を向ける音緒。
みちる「どした?」
音緒「い、いや、何でもない。何でもないから」
慌てて鞄を閉める音緒。
【SE】鞄を閉める音。
みちる、怪訝そうに、
みちる「……今日の音緒、なんかおかしい。ほんとになんかあったの?」
音緒「べ、別に何もないよ。それよりも、わたしちょっと用事があるから、みんなは先にプレハブ小屋に行ってて!」
みちる「ちょ、ちょっと音緒!」
【SE】鞄を持つ音。
【SE】教室の扉を開ける音。
【SE】廊下を走る音。
巧「……いっちゃいましたね」
健斗「先輩、何かあったんスか?」
みちる「あたしが聞きたいよ」
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