永山あゆむの小説・シナリオ創作ホームページです。
Scene9-1 |
||
<登場人物> | ||
|
||
○高校 運動場 テニスコート(夜) 優太「はあっ!!」 ライトアップされたテニスコートで、サーブの練習をしている優太。テニスウェアを着ている。 コートの向かい側にはソフトテニスで使用するボールが散乱している。 優太「ふう……」 優太、左手で額の汗をぬぐう。 【SE】拍手する音。 音緒「ナイスサーブ」 優太「え? ネッチー?」 音緒がいることに驚く優太。 音緒、不満そうな表情で、 音緒「ね・お!」 優太「へいへい。どうしたんだ? もうすぐ部活だろ?」 音緒「少し時間があるから、よ、様子を見にきただけよ。練習はもう終わったの?」 優太「ああ。だけどもうちょっと練習してえからさ、こうしてサーブを!」 優太、トスを上げ、サーブを打つ。コートの向かい側にボールが弾む。 優太「よし!」 音緒「練習熱心なのはいいけど、大会本番でへばらないでよ。疲れを取るのも練習よ」 優太「わかってるつーの。それよりも何か話があるんだろ? ベンチに座って話さねーか?」 音緒「えっ!? べべべ、ベンチ?」 優太「ん? 何、慌ててんだ?」 音緒「コホン、べ、別に何も……じゃ、じゃあ、おう」 頷く音緒。そんな彼女を不思議そうに一瞥する優太。 コートの後ろにあるベンチに向かう音緒と優太。 ○高校 運動場 テニスコート前(夜) テニスコートの近くにある生垣(いけがき)から、音緒と優太の様子を見つめる、朱莉、蒼士、楓華、実緒。 朱莉「やっぱりここにいたわね」 実緒「音緒ちゃん」 楓華「いつもとはえらい違いね」 朱莉「本命だったあいつに渡すんだもの。くうー、恋愛漫画の世界を体験しているみたいで、乙女心がくすぐられるわ」 楓華「それ、朱莉ちゃんが言う?」 蒼士「な、なあ。こ、こういうの、趣味じゃないんだが……」 朱莉、笑った表情で、 朱莉「そうちゃん、逃げる気?」 蒼士「うっ……」 おののく蒼士。 楓華「ここまで来たら後には引き返せないわ」 実緒、苦笑を浮かべて、 実緒「見守るしかないんだね……」 朱莉「そう! 恋愛初心者なんだから何かあったらサポートしてあげないとね!」 蒼士「単に興味があるだけじゃ」 朱莉、笑顔で、 朱莉「なにかいった?」 蒼士「……な、なんでもありません」 楓華「二人とも、静かに。ほら、会話しているよ」 朱莉「おおっ!」 朱莉、前のめりになってベンチに座っている音緒と優太を見つめる。 楓華「静かに!」 ○高校 運動場 テニスコート(夜) コートの後ろにある、ベンチに座る音緒。 【SE】ベンチに座る音。 音緒(心の声)「うー……いつもなら平気なのに、なんでこんなにバクバクするの!?」 手が震えて、もじもじする音緒。 優太「どうした? さっきから妙に落ち着いてねーけど」 音緒「べ、べつに、何でもないわよ! ほら、とっとと座ったら」 ベンチを軽くたたく音緒。 優太「へいへい」 ベンチに腰かける優太。 優太「よっ……あーいててて!」 腰をさする優太。 音緒「また腰が痛いの?」 優太「テニスに腰痛はつきものだからな。コルセットつけてるけど……いててて……」 音緒、ため息をついて、 音緒「しょーがないわねぇ」 音緒、カバンから何かを取り出す。 【SE】取り出す音。 音緒「はい、湿布薬」 優太「ああ、すまん。……って、なんでそんなものを持ってんだよ!?」 音緒「いざという時のために持ってんの。メンバーやアンタに何かあったらってときのために。あくまでも非常用だけど」 優太「ふーん、まっ、サンキュ」 音緒「フン。幼馴染みとして当然よ。小さいころからアンタを見てきたんだし。いじめられているときも、迷子になったときも、全部わたしが」 優太「だあー、それは昔のことだろ。俺はもう、ガキじゃねーよ!」 音緒「だったら、なんでわたしを夏の大会に呼んだのよ? 小学生のころみたいに」 優太「う……そ、それはだな……」 音緒「大変だったなあー。夏のアマチュアロックフェスの直前だったのに。なんでそんなときに、アンタの試合をわざわざ見ないといけなかったのかなあ?」 優太「そりゃあ、おまえ……約束を果たしたかっただけだし。今回はいけそうだと自信があったから」 音緒、少し意地悪そうに、 音緒「その結果、ベスト8だったけどねえ」 優太「わ、悪かったな。優勝できなくて」 音緒「そうよ。約束を破っちゃって。あーあ、まだまだわたしがいないとダメだねー」 優太「そんなわけ……いや、そうかもな」 音緒「何よ、開き直って」 優太「だってさ、おまえを見返したくてソフトテニスをガキの頃からやり始めて、大会にでるたびに応援に来てくれるおまえの声を聞いて、それがきっかけで負け試合がひっくり返ったことがいくつあったか」 音緒「そ、そう?」 優太「ああ、『バカ優太、このまま負けんじゃねー』とか言ってたよな? あとは相手チームに無言のオーラで圧を与えたり」 音緒、恥ずかしそうに、 音緒「そ、そんなこと、思い出さなくていいの!」 優太「それにさ、中学でエースだったころ、優勝が懸かった団体戦で負けて、メンバーには裏切られて、俺は挫折して、高校まで引きずっていたけど、おまえの励ましがなかったら、ここでソフトテニスをすることはなかったと、思う」 音緒「ふ、ふーん」 優太「だから、おまえに優勝してやるから来い、と言ったのかもな。昔のように、おまえが後ろにいないと、しっくりこないというか……まあ、俺にもプライドはあるし」 音緒「優太……」 優太、照れくさくなって、必死そうな声音で、 優太「か、勘違いすんなよ。あくまでもパワーなんだよ、パワー。おまえがいたら、力が湧くんだよ。それだけ、それだけだかんな!」 音緒「あ、ああ……そういうこと、ね」 優太「なんだよ、残念そうな顔をして」 音緒、期待した言葉がでなかったので、不満そうに、 音緒「べっつにー。あんたがわたしを道具として見てないことがよ―――く分かりました! フンだ」 優太 「な、なんで、根に持つんだよ。それに、道具だなんて一言も思ってないっつーの!」 音緒、小声で、 音緒「そんな風に言われたら、ドキドキするじゃない……バカ」 優太「なんだよ?」 音緒「何でもないわよ、バカ優太!」 優太「はあ? 何でそうなるんだよ?」 音緒「せ、詮索しなくていいから!」 優太「そうか? じゃあ、何の用だよ?」 音緒、声を裏返して、 音緒「へっ!?」 優太「だから、俺に何の用だよ? 本題はそっちだろ?」 音緒「あ、ああ、そうね。そうだよね。はははは……コホン」 音緒、一呼吸置く。 音緒(心の声)「勇気を出すのよ、音緒。勇気を出して、伝えるのよ!」 音緒、鞄の中からチョコレートが入っている取り出す。 【SE】取り出す音。 音緒、顔を真っ赤にして、勢いよく、 音緒「はい! あげる!!」 優太にチョコレートを差し出す音緒。 |
||
<←Scene8-2へ|Scene9-2へ→> |
moonlight -special edition- count |
Total count |
Topへ | moonlight-special edition-メインページへ | Web Novelメインページへ |