新・永山あゆむの小さな工房 タイトル

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序章:希望となるために
第6話:求める者(2)
<登場人物>

エイジ・ハセガワ(18)(14)男性。主人公。国際特秘遂行警備組織“影星(エクリプス)”団員。
エミリー・ミチヅキ(18)(14)女性。ヒロイン。アイドル歌手。通称エミー。
ブリーゼ・オイサキ(28)女性。国際特秘遂行警備組織“影星”ミザール支部副支団長。
フリッツ・エダサワ(33)男性。国際特秘遂行警備組織“影星”ミザール支部支団長。
メルヴィン・シバサキ(32)男性。国際特秘遂行警備組織“影星”ミザール支部治療班班長

団員A
謎の声・女性A
謎の声・女性B
奪心(シェル)A
奪心(シェル)B



〇ミザール国 国際特秘遂行警備組織“影星(エクリプス)” ミザール支部 入口

 スライムの中に何かが動き回っている(何が動き回っているのか、エイジたちには分からない)。

 エイジ、唖然としながら、

エイジ「なんだ、あれ……あれも、人魔(アロー)化した魔物なのか」

エイジ、左手でスライムを差しながら、ブリーゼに訊ねる。

ブリーゼ「あんなの見たことないわ……でも、その一種なのは間違いないわ。あいつの周り、闇子(サタン)が異常に濃いから」

エイジ「わかるのか?」

ブリーゼ「当然でしょ。アンタはまだ素人同然だから分からないけど、戦闘を重ねれば分かってくるわよ。光子(マナ)とは違う、イヤミな力が」

 スライムは赤紫のオーラを纏う。

ブリーゼ「! みんな中へ!」

 ブリーゼの絶叫と共に、団員達は施設へと戻っていく。
 エイジ、エミリーに、

エイジ「エミー、下がれ!」

 エミリー、エイジの右わき腹をぎゅっと掴み、

エミリー「嫌よ! わたしはエイジと一緒にいる!」
エイジ「一緒にいるって、おまえ……」
ブリーゼ「来るわよ! 武器で防御して!」

 スライム、縦に少し伸びて、赤紫色のオーラから放たれる衝撃波を放つ。

エイジ「くっ……!」
エミリー「キャア!」

 剣を地面に突き刺し、暴風に耐えるエイジ。
 エイジに必死にしがみつくエミリー。
 ブリーゼ、顔の前で手を交差し、ブーツに込められている光子(マナ)の力を使って踏ん張る。
 暴風がおさまる。

ブリーゼ「今だわ!」

 ブリーゼ、スライムに向かって全力疾走し、風の力を込めたブーツで勢いよく右足を蹴り上げる。
 しかし、スライムは変形するだけで、蹴った感触がない。

ブリーゼ「!?」

 あっけにとられるブリーゼ。
 スライム、ブリーゼに向かって至近距離で暗黒弾を放つ。
 ブリーゼ、腹に暗黒弾が当たる。

ブリーゼ「ぐぅぅぅぅぅぅっ!」

 吹き飛ばされるブリーゼ。
 ブリーゼ、施設の入口の壁に激突し、地面に這いつくばる。

エイジ「ブリーゼ!」

エイジ、彼女を一瞥し、

エイジ「……っ!」

 エイジ、服を掴んでいるエミリーを強引に振り払い、無我夢中でスライムのところまで走る。

エミリー「エイジ!」

ブリーゼ「……無闇に攻撃してはダメ!」

 地面に這いつきながら、エイジの方へと顔を見上げて絶叫するブリーゼ。

エイジ「うおおおおっ!」

 剣に火の力を込めて、斜めの軌跡を描いてスライムを斬り下ろすエイジ。

エイジ「どうだ!」

 スライム、エイジの攻撃で真っ二つになる。
 しかし真っ二つになるもすぐにくっつき、一つになるスライム。

エイジ「……うそだろ……」

 目を丸くし、身体が強張るエイジ。

エミリー「エイジ!」

エイジ「!」
   
 エイジ、エミリーの声に反応し、スライムの頭の上を見つめる。
 スライムの頭の上には手が作られている。それをエイジに向かって叩きつける。

エイジ「くぅおっ!」

 エイジ、剣を盾にしながらバックステップで躱すも、尻餅をつく。

エイジ「いつつつ……」

エミリー「大丈夫!?」

 尻餅をついたエイジの下へ駆けつけるエミリー。

エイジ「大丈夫。だけど、あいつ……」

ブリーゼ「斬った感触がない……そうでしょ?」

 ブリーゼがエイジの右側に立っている。
 服が少し痛んでいる。
 エイジ、ブリーゼの方へと見上げて、

エイジ「平気なのか?」

ブリーゼ「ヤワな身体じゃないって言ったでしょ」

ブリーゼ、人差し指でサングラスのブリッジを上げる。

ブリーゼ「この人魔魔物(アローモンスター)、ただ近接で戦ってたらやられるわ。光子(マナ)そのもののエネルギー弾を放たないといけないようね」

エイジ「エネルギー弾? それってつまり、技で対抗しないといけないのか? 俺の衝火(しょうか)やあんたの刃を放つ技」

ブリーゼ「ええ。だけど光子(マナ)そのもののエネルギーを放つ技は、光子(マナ)の消耗が激しいの。アタシやアンタのように、近接戦闘が得意なヤツは、武器の精製そのものに光子(マナ)の力を消費してるからその分制限されるし、ヘタすると武器を精製する力も一時的に失ってしまうわ。まあ、光子(マナ)を操る熟練度にもよるけどね。グローブに埋め込まれた石はまだ光ってる?」

 エイジ、ステルラグローブの手の甲の部分にある石を確認しながら、

エイジ「ああ、まだ光ってる」

ブリーゼ「結構。その石をよく見ておくことね。ソレ、装備者の光子(マナ)がどれくらい残っているか教えてくれるから」

エイジ「わかった」

ブリーゼ「来るわよ!」

 スライム、巨大な両手を作り、エイジたちにむかって赤紫のレーザーを放つ。レーザーが地面をえぐる。

エイジ「エミー、下がってろ! 俺は、大丈夫だから! な」

 エミリー、少しだけ笑みをこぼすエイジを見つめ、ゆっくりと頷き、施設の入口の方へと向かう。

 エイジ、エミリーを一瞥し、スライムが放つレーザーを見て、

エイジ「喰らうかよ!」

 エイジ、横っ飛びでスライムが放つレーザーを躱す。
 ブリーゼ、立ち止まったまま、レーザーと対峙した瞬間、

ブリーゼ「フッ!」

 すぐに左によって攻撃を躱す。

ブリーゼ「こっちもいくわよ! 裂砕刃(れっさいじん)!」
エイジ「衝火(しょうか)!」

 ブリーゼ、右足を上げて緑色の真空刃を繰り出す。
 エイジ、剣を地面に叩きつけて朱い光線を放つ。
 二つの力がスライムに直撃する。
 スライムの中心に大きな孔(あな)が開く。

エイジ「よっしゃ! これで浄化をすれば……」

 スライム、すぐに再生し、孔を塞ぐ。

エイジ「なっ……!」

 驚愕するエイジ。
 ブリーゼ、額から冷や汗を一滴垂らしながら、

ブリーゼ「本体がどこかにあるっていうの?」

 慄くブリーゼ。
 スライム、中心から、藍色の植物のツルのようなものをエイジたちに伸ばす。

エイジ「くっ……!」

 躱すエイジとブリーゼ。
 しかし、その藍色のツルは伸びていく。

ブリーゼ「!」

 ブリーゼ、施設の入口の方へと顔を向ける。
 ツルが、エミリーを狙う。

エミリー「え?」

 あっけにとられるエミリー。
 そのエミリーに、藍色のツルが捕える。

エミリー「!?」

 ツルに巻きつかれ、口を大きく開けて驚愕するエミリー。
 ツルがスライムの方へと引き戻される。
 目を丸くするブリーゼ。

ブリーゼ「しまった!」

エミリー「キャアアアアアアア!!」

エイジ「エミー!」

エミリー、そのままスライムに吸収され、中に閉じ込められる。

エミリー「エイジ! ブリーゼさん!」

 スライムの中からドアを叩くように、藍色の表面を叩くエミリー。

エイジ「くっそ。これじゃあ攻撃が……」

 眉間にしわを寄せ、スライムを見つめるエイジ。
 スライム、2つの巨大な手を作り出し、エイジとブリーゼを握る。

エイジ・ブリーゼ「!」

 エイジとブリーゼ、スライムの巨大な手に握られながら、宙に浮く。
 エイジ、苦しそうに、

エイジ「くっ……! ぶよぶよした魔物のくせに、どっからこんな握力が……」

 スライム、エイジとブリーゼをさらに強く握りしめる。

ブリーゼ「くううっ……このままじゃ……」

 スライムに強く握りしめられている二人を、スライムの中から見上げるエミリー。
 エミリー、必死に中から表面を叩く。

エミリー「出して、出してよ!」

 必死に叩くエミリーの背後から、紫色の細い触手が、必死に叩くエミリーの肩を伝う。
 エミリー、震えながら、

エミリー「ひぃぃっ!」

 裏返った悲鳴を挙げるエミリー。

エミリー「な、なに!?」

 振り返るエミリー。
 すると、藍色の空間からクラゲ型の魔物が現れる。

エミリー「! こ、これが本体!?」

 クラゲ型の魔物、紫色の細い触手をエミリーに伸ばす。

エミリー「……っ!」

 クラゲ型の無数の触手が、徐々にエミリーに近づく。
 エミリー、胸元にあるアメジストのネックレスに手を当て、ぎゅっと目を閉じ、

エミリー(モノローグ)「お願い。わたしに、わたしにも、みんなを助ける力を、支える力を……神様……!」

 エミリーの胸元にあるアメジストのネックレスが白く光りだす。
 エミリー、ゆっくりと目を開け、白く光るネックレスに驚く。
 スライムの巨大な手に握られ、宙に浮いているエイジとブリーゼ。
 エイジ、スライムの白く光っている部分を見下ろし、ブリーゼの方へと顔を向け、

エイジ「! ブ、ブリーゼ! スライムが……!」
ブリーゼ「ええ……」

 呆然と見下ろすブリーゼ。
 スライムの中にいるエミリー、白く光るネックレスを手に取り、見つめる。

エミリー「何が、起こって……きゃあ!」

ネックレスが眩い光を発し、エミリーの視界が白く包まれる。


〇真っ白な空間

眩い真っ白な空間の中、目を閉じ、ひとり佇むエミリー。

エミリー「……ん」

ゆっくりと目を開けるエミリー。

エミリー「ここは……?」

エミリー、ゆっくりと真っ白な空間を見回す。

女性(声のみ)「とうとう、来てしまいましたね」

エミリー「え……?」

 女性の声にたじろぐエミリー。
 すると、エミリーの前に、髪の長い女性をかたどったシルエットが現れる。

エミリー「あ、あなたは……?」

 女性、少し悲しそうな声で、

女性「力が欲しい、ですか?」

エミリー「力?」

女性「はい」

 女性、頷く。

女性「貴方の中に眠っている力、それを奮えば、多くの人たちを翻弄し、貴方の運命もまた、悲哀に満ちたものになるかもしれません。それでも欲しいですか……?」

エミリー「……」

 エミリー、しばらく俯く。
 エミリーの脳裏に、エイジが影星(エクリプス)の入団に覚悟を決めたときの表情――医務室でのやりとりが甦る。
 エミリー、顔を上げ、覚悟を決めた表情で、

エミリー「はい、欲しいです。例えこの先どうなっても、今は、今助けたい人がいるんです。わたしたちがいる『今』を守るために、私はそれを使います!」

女性「その誓約に、嘘はないのですね」

エミリー「……はい!」

女性「分かりました。では、私の力の一端を貴方に……」

 女性は両手を広げ金色に光出す。

エミリー「……!」

 燦然(さんぜん)たる女性に、エミリーは両腕で顔を隠す。


〇ミザール国 国際特秘遂行警備組織“影星(エクリプス)” ミザール支部 入口

 スライムの巨大な手に握られ、宙に浮いているエイジとブリーゼ、光り輝くスライムを見下ろしている。
エイジ、頬に冷や汗を垂らしながら、

エイジ「エミー……一体、何が……?」

ブリーゼ「!?」

 光がスライムから伝い、二人が握られている巨大な手が白く輝く。
 その瞬間、巨大なスライムの手が消滅する。

エイジ「へっ……うわああああっ!」

 落下し、顔から地面をぶつけるエイジ。

エイジ「いってぇー……」

 顔に右手を当てるエイジ。
 ブリーゼは緑色に輝くブーツの力で、ゆっくりと着地する。

ブリーゼ「……」

 真剣な眼差しで、右側の一部分が白く輝くスライムを見つめるブリーゼ。
 エイジも立ち上がり、スライムを見つめる。
 エイジとブリーゼのステルラグローブが白く光る。

エイジ・ブリーゼ「!」

 左手に装備している、白く光るステルラグローブに目を向けるエイジ。ブリーゼもステルラグローブに目を向けている。
 エイジ、ブリーゼの方へと視線を向けて、

エイジ「ブリーゼ、これは……!」

ブリーゼ「適合者――《選星者(シュッツァー)》反応よ! ということは……」

エイジ「まさか、エミー!?」

 エイジ、スライムの右側の一部分が白く輝く部分へ顔を向ける。

ブリーゼ「そうね。でも、なんでいきなり適合反応(コンフォーミング)が……いいえ、そんなことはどうでもいいわね。もしかしたら、この状況を切り抜けられるかも」

 ブリーゼ、右手で左胸ポケットからスペア用のステルラグローブを取り出す。
 エイジ、ブリーゼの左肩を強く掴む。

エイジ「おい! まさかエミーにも戦わせるつもりじゃ……」

ブリーゼ「そうしないと打破できないわ。それとも何? このままアイツを攻撃して、彼女を傷つけずに解放する方法があるの?」

エイジ「……」

 エイジ、身体を震わせながら、苦虫を噛んだような表情で俯き、
 エイジ、冷静に、

エイジ「わーったよ。だけど、今回だけだかんな」

ブリーゼ「結構」

 スライムの中にいるエミリー、固く閉ざした瞳をゆっくりと開ける。
 エミリー、全身が白いライトエフェクトに包まれていることに驚きながら、

エミリー「え? なに? どうしちゃったの、わたし……!?」

 自分の身体をあちこち見ながら動揺するエミリー。
 そんな彼女に、何も動きを見せずに対峙するクラゲ型の魔物。

ブリーゼ「エミリー!」

 外にいるブリーゼの声が聞こえ、振り返るエミリー。

ブリーゼ「これを使って!」

 何かを投げるブリーゼ。
 ブリーゼの投げたもの――ステルラグローブがスライムの中へと入っていき、エミリーに届く。

エミリー「これはエイジが使っているものと同じ……」

 ステルラグローブを拾うエミリー、すると手の甲の部分にある埋め込まれた鉱石が白く光る。

エミリー「もしかしてこの力……よし! エイジは確か……」

 エミリー、左手にステルラグローブを装備する。
 左手の甲の部分にある白く輝く鉱石を右手で押さえながら、

エミリー「えっと、ま、光子解放(マナ・グリッター)!!」

 叫んだ瞬間、真っ白な輝きに吸い込まれるエミリー。
 スライムと対峙しているエイジとブリーゼ。スライムの右側の一部分が燦然(さんぜん)と白く輝き、それがスライムの全身に広がる。
 白い輝きに満ちて爆散するスライム。

エイジ・ブリーゼ「!!」

 その衝撃に風が薙ぎ、俯きながら両腕を前に出して防ぐエイジとブリーゼ。
 しばらくすると白い輝きが消える。
 ゆっくりと目を開けるエイジとブリーゼ。

エイジ「!」

 目を大きく見開くエイジ。
 二人の目の前には、ブラウンでストレートミディアムボブの髪型、胸元にはアメジストのネックレス、そして真っ赤なドレスを着ているエミリーがいる。

 エミリー、洗練とされた美しさを放ちながら、左手はステルラグローブを装備し、右手には真っ白いバトンを持って前に突きだしている。




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